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大津地方裁判所 平成7年(わ)367号 判決

裁判所書記官

本田智明

本店の所在地

奈良県北葛城郡王寺町元町二丁目一八番一一号

法人の名称

共伸開発株式会社

代表者の住居

奈良県香芝市関屋北八丁目一五〇五番地

代表者の氏名

渡辺博治こと金商根

国籍

韓国

住居

奈良県香芝市関屋北八丁目一五〇五番地

会社役員

渡辺博治こと金商根

一九五七年六月二三日生

右の者に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官西浦久子、内上和博出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人共伸開発株式会社を罰金四、〇〇〇万円に、被告人金商根を懲役一年四月にそれぞれ処する。

被告人金商根に対し、この裁判の確定のあった日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人共伸開発株式会社は、奈良県北葛城郡王寺町元町二丁目一八番一一号に本店を置き、遊技場の経営等を目的とする資本金四、八〇〇万円の株式会社であり、被告人渡辺博治こと金商根は、同会社の代表取締役して、その業務全般を統括しているものであるが、被告人金は、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成三年七月一日から同四年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二六二、二三八、九七五円であったのにもかかわらず、平成四年八月二八日、奈良県大和高田市西町一番一五号所在の所轄葛城税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二八、〇八五、五一八円でこれに対する法人税額が九、五四六、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額九七、三五三、四〇〇円と右申告税額との差額八七、八〇七、四〇〇円を免れ、

第二  平成四年七月一日から同五年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一〇七、四八九、四五三円であったのにもかかわらず、平成五年八月三〇日、前記所轄葛城税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三五、〇三〇、七五〇円でこれに対する法人税額が一二、一八五、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三九、三五七、四〇〇円と右申告税額との差額二七、一七二、二〇〇円を免れ、

第三  平成五年七月一日から同六年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二五一、六三五、一五八円であったのにもかかわらず、平成六年八月二六日、前記所轄葛城税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六八、二一七、八五二円でこれに対する法人税額が二四、四九二、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額九三、二七三、八〇〇円と右申告税額との差額六八、七八一、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人金の当公判廷における供述

一  被告人金の検察官調書(乙14)及び大蔵事務官に対する質問てん末書一〇通(乙4ないし13)

一  被告人金の大蔵事務官に対する質問てん末書抄本

一  河田伊都美、奥野直雄の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  査察官調査書一六通

一  証明書三通

一  脱税額計算書三通

一  大蔵事務官作成の「所轄税務署の所在地について」と題する書面

一  大蔵事務官作成の「修正申告書写の提出について」と題する書面

一  登記簿謄本

(法令の適用)

判示各所為は、各事業年度毎にいずれも法人税法一五九条一項(被告会社については、更に、同法一六四条一項)に該当するところ、被告会社についてはいずれも情状により同法一五九条二項を適用し、被告人金については、いずれも所定刑中懲役刑を選択することとし、以上はそれぞれ平成七年法律第九一号による刑法の一部を改正する法律附則二条一項により、同法による改正前の刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内において罰金四〇〇〇万円に、被告人金については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一年四月にそれぞれ処し、被告人金に対しては情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、パチンコ店を経営する被告会社の代表取締役である被告人金が、三事業年度にわたり、被告会社に関し、合計四億九〇〇〇万円余りの所得を秘匿し、合計一億八〇〇〇万円余りの法人税を免れた事案である。

脱税の動機は、パチンコ店経営の将来への不安から蓄財に走ったのであるが、かかる利己的な目的には、酌量の余地はなく、その平均ほ脱率は、約八〇パーセントの高率に達し、ほ脱税額も多額である上、犯行態様も、売上金を管理するコンピューターに虚偽の情報を日々打ち込み、その内容を恒常的に改ざんし、闇給与や闇地代を支払うなどの税法上問題のある処理をした後、消費税相当額を含めた売上除外金を父親の下で管理させていたものであり、被告人金の納税意識は極めて乏しく、その犯行は計画的で悪質であって、一般予防の見地からも、脱税には適正な処罰が要請されていることに徴すると、被告会社及び被告人金の刑事責任を軽視することができない。

しかしながら、他方、被告会社は、修正申告の後、銀行から借入をするなどして本税および重加算税等附帯税のうち、合計四億五〇〇〇万円を既に納付したこと、新たに顧問税理士を迎えて、脱税の反社会性を認識し、売上集計のコンピューターを一新して書換え不能にするなど、不正な経理処理がされないような体制に改めたこと、被告人金は、本件税務調査の着手後は、直ちに非を認め、改悛の情を示していること、被告人には前科がないことなど、被告会社及び被告人金のために酌むべき情状のあることを考慮し、主文の判決を相当と考える。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中川隆司)

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